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MUSHMANS Leather
2024-25 FW
Leather Jacket Collection
Custom Order Exhibition
開催日程:2024年2月10日(土)〜2024年3月20日(水)
注1※期間内の水曜日は定休日の為、日程には含まれません。※
注2※最終日3月20日(水・春分の日)は水曜日ですが営業します。※
注3※期間内に生産限界数に達した場合は早期終了する場合があります。※
皆様こんにちは!!MUSHMANS代表の藤田です!!
連日に渡りPRいたしております【2024-25FW MUSHMANS Leather Custom Order Exhibition】に関して、HPのアクセス件数も通常時の数倍に膨れ上がり、様々なお問合せもいただいております。
皆様より、大きなご期待をいただいているものと解釈し、私共も気持ちを引き締めて初日を迎えようと思っております。
さて、本日はこのカスタムオーダー会において、非常に重要な案件でもある【レザーマテリアル/革素材】についてご紹介いたします。
昨年に引き続き、様々なレザーをご用意すると共に、以前よりPRしておりました『MUSHMANS 15th Special Material』に関しても詳しくご説明いたしますので、どうぞ御確認下さいませ<m(__)m>
Part 7
カスタムオーダー
レザーマテリアル
について
このMUSHMANS Leatherカスタムオーダー会を実施し、2シーズンが経過。
日本のレザージャケット市場においては『馬革』というものがもてはやされ、定着しつつあるように感じられます。
確かに、この馬革においては新喜皮革が鞣すベジタブルタンニン鞣しのホースハイドはとても良い素材ですが、『馬革=何でも良い素材』という、図式を払拭すべく、本当に良い素材とは何なのかを表現するべく素材セレクトをしてきました。
そして、多くのお客様に共感いただけるようになってきていると、実感いたしております。
私達が至高のマテリアルとして提案するBADALASSI社のレザー(牛革)も、数年前に比べるとかなり高騰してきております。
しかしながら、価格に対する品質という観点から、まだまだこのバランスは取れていると感じる為、本年においてもBADALASSI社のレザーをベースマテリアルとして設定しております。
さらに、昨年から取り組んでいる、東京に所在するタンナーによるGOAT SKIN(山羊革)の設定。
馬革においては至高の素材である新喜皮革のHORSE HIDE(馬革)のスペシャルマテリアルもご用意いたしましたので、是非この後に続く御紹介を御覧いただければ幸甚にございます。
まずはベースマテリアルから御紹介いたします。
BADALASSI Carlo s.r.l
イタリア トスカーナ州フィレンツェから凡そ50kmのピサ県でBADALASSI CARLO社は操業しております。
人口密度もそれほど多くなく、風光明媚な街並みが続く長閑なその町で、我々が愛するレザーが作り出されているのです。
その町一帯は皮革製造会社が軒を連ねる場所として栄えており、TEMPESTI社やWalpier社といった普段私達が好んで手にするレザーマテリアルを生み出すタンナーが、車で10分圏内という立地で操業しております。
BADALASSI社の創業は1960年代という事で50年程の歴史ではありますが、ここで生み出されるレザーには1000年以上の歴史があります。
トスカーナ地方に古来から伝承する"Vacchetta/バケッタ"製法は、この地区に5000以上あるタンナーの中でも数社しか再現出来ないとされております。
その中でも、このBADALASSI CARLO社は古のバケッタ製法を極めて高い次元で再現しているタンナーと言われております。
それは、BADALASSI CARLO社の創業者"Carlo・Badalassi氏"の長年培った研究の結果でありました。
Carlo・Badalassi氏は製革学校の研究者であり教師でもありました。トスカーナに伝承される古のバケッタ製法、古来からのバケッタ製法を日々追及し、それによって得た知識をBADALASSI CARLO創業時に活かしたのです。
では、バケッタ製法というのは何なのか?という疑問に行き当たります。
レザー愛好家の方々には"バケッタレザー"という響きはよく耳にするものだと思いますが、バケッタレザーとBADALASSI社のお家芸であるバケッタ製法には違いがあります。
まず、よく耳にするバケッタレザーというのは主にトスカーナ州で製造されるベジタブルタンニン鞣しによる皮革を総称した名称となっております。このトスカーナ州では前述したとおり5000社にも及ぶ大小のタンナーが存在しているのですが、その多くが植物性の油や魚油を使用して加脂しております。これにはメリットがあり、革に浸透しやすくコストも比較的安価、完成までの時間とコストを抑える事ができます。 もちろん各社独自のレシピに基き製造されておりますし、沢山の良質なレザーはございます。
一方、BADALASSI社のバケッタ製法というのは、動物性の脂(牛脚油)をベースとしたものが使用されます。
勿論、それ以外にも様々な配合がなされてレシピが成立しており(企業秘密)ますが、この動物性の脂というのは革に浸透し難い特性を持っており、さらにコストも植物性油に比べると高価です。 先に紹介した一般的なバケッタレザーで使用される加脂方法に比べると時間もコストも高いという事になるのです。
ただ、やはりここではコストや手間とは異なるメリットが多くあります。コスト高で手間も暇もかかる動物性の脂ですが、一旦革に浸透してしまいますと油分が抜け難いという特性を持っているという事です。
「BADALASSIのレザーは十年経ってもオイル感が変わらない。」MUSHMANS創業当初に販売した製品をお持ちのお客様から、最近このようなお声をいただきますが、オイル抜けが起きにくい、これこそがBADALASSIレザーの真骨頂なのでしょう。
また、バケッタ製法で用いられる動物性の脂は経年変化にも大きな影響を与えます。
BADALASSI社のレザーは大きな経年変化が魅力のひとつで、新品時鮮やかな発色であったものが時間の経過と共に落ち着いた発色へと移行します。 重厚なエイジングと言えばいいでしょうか。
私の感覚としては、植物系の油によって加脂されているレザーマテリアル(例:ワルピエ/ドラーロ)等は、比較的新品時の発色はそのままにアッサリとした経年変化となる傾向にあると思います。 製品としてはその方が合っている場合もありますので、良い悪いの議論は必要無いかと思いますが、BADALASSIに代表されるバケッタ製法(動物系の脂で加脂されている革)は茶色味が強く影響してくる傾向にあります。
我々が製品化するアイテムは重厚な物が多い為、製品とマテリアルのバランスが非常に良いというふうに思っております。
経年変化という部分で我々が重要視するのは、発色の経年だけには留まりません。それは革が帯びる"光沢感"も重要なファクターです。
前述した通り、牛脚油をベースとした加脂剤を使用して加脂されるバケッタ製法はオイルがしっかりと革に浸透しております。
それが影響し着込む程に光沢が増して行くのです。
BADALASSI社のマテリアルを使用した、レザージャケットやブーツ等を身につけられた事がある方には解るかと思いますが、着用し動作した時の『ギリギリ』といった音、これこそが後に光沢感を生むひとつの要素でございます。
浸透した油分は革表面にも定着しており、皺となった部分は革の表面と革の表面が擦れる時に、その油分によって若干グリップしております。この時の音こそが着用時の"革鳴き"といわれる独特のサウンドを生んでおります。
この"革鳴き"の現象時に革同士が擦れあう事で、革表面に定着したオイル分が磨かれ、革の表面がフラットになる事で光沢が生まれるという事になります。 使い込めば使い込む程に自然な光沢が生まれるのは、こういった事が影響しているのです。
【BADALASSI CARLO Nappa Lux/ナッパ ラックス】Up charge +0yen ※Biancoのみ+8000yen※
今回レギュラーマテリアルとして設定するマテリアルはBADALASSI社のレザーラインナップの中でも、比較的衣類に使いやすい"Nappa Lux"という種類のマテリアルを使用しております。
同社のマテリアルで最も有名なのがMinerva(ミネルバ)シリーズのLiscio(リスシオ)やBox(ボックス)といった種類になりますが、こちらでは靴類や財布、鞄等は作れても衣類となると不向きと判断せざるをえません。リスシオやボックスのミネルバシリーズは革厚が2mmを超えるレンジとなっており、繊維が張り過ぎている為ジャケット類になってしまうと皺の入り方が美しく無く、着用感も悪くなってしまいます。
そこで、このNappaシリーズという事になる訳です。革厚が1.4mm〜程度と抑えられた厚みとなっておりますが、これは単純に通常のリスシオ等に使用される厚いレザーを漉いた訳では無く、原皮の段階からリスシオと比べて薄めの素材を選り分けて鞣しに入れるという事をしております。
元々から薄めの原皮を使用している為、皺の入り方が自然となり、着用感が良好なのが特徴です。
これと相まって、バケッタ製法により深く浸透した油分は、一旦着用者の身体の型に皺が入ると、形状を記憶するが如く素晴らしい皺が刻まれます。
革表面はカゼインと呼ばれる、卵白等のタンパク質を使用した仕上げを、熱アイロンと共に実施します。
ラッカー等の化学物質では無い為、自然な光沢感が付加され、艶やかな仕上がりを実現します。
Nappa Luxのカラーラインアップは全13色
↓↓↓
【BADALASSI CARLO Euphrate/ユーフラテ】Up charge +10,000yen(11,000yen)
名称の通り、チグリス川・ユーフラテス川周辺から隆起した、メソポタミア文明からインスパイアされ作り出された素材。
使い込まれたようなノスタルジックな印象を与え、ビンテージのような表情を作品に与える事が出来るマテリアルです。
レギュラーレザーで使用される"Nappa/ナッパ"シリーズを『ウェットバック』と呼ばれる技法にて加工しております。
鞣し上がり染色が完了した素材を水と共にドラムへ入れ、一定時間ドラムを回す事で革の繊維をほぐす作業を行います。
これによって自然なシボ感が与えられ、Nappaシリーズに比べて経年したような表情を与えます。
この状態から、油分を与えながら水分を抜く乾燥の行程を行い、素材から完全に水分が抜けた後に『グレージング加工』と呼ばれる工程に移ります。
このグレージング加工は、革表面を水晶やガラスを用いて磨き上げる作業です。
先に御紹介したNappa Luxは表面をカゼインによって仕上げておりますが、こちらのユーフラテでは仕上げ剤を用いずに、より自然な仕上がりとなっております。
【BADALASSI CARLO Tigr/チグリ】Up charge +15,000yen(16,500yen)
上記"Euphrate/ユーフラテ"よりも、さらにシボ感を強調させた仕様がこちらの"Tigr/チグリ"です。
より厚みのある素材を『ウェットバック』する素材としており、ベース革厚が厚い素材を水と共にドラムに入れる事で、より素材が縮み強烈なシボを実現します。
こちらのレザーマテリアルは、仕上がり厚が1.8mm〜2.0mm程度となってしまい、レザージャケットに適さない革厚です。
これを強度上問題の出ない厚み(1.4mm)程度まで漉く事によって、レザージャケットに対応出来るようにしております。
強烈なシボが生み出す、革表面の凹凸は、新品時でも充分に迫力を感じていただけますが、使用年数を経過すればするほどにより迫力を増す事でしょう。
この凹凸の凸部分が着用時に擦れる事で磨かれ、より強い光沢を放つ事になります。
凹部は接触しない事で大きな変化が出ない為、この凹凸部の経年変化差がより大きな発色差となり、革らしいダイナミックな経年変化を実現する事でしょう。
※シボ部分を出来る限り使用して裁断いたしますが、型押しレザーでは無い為、シボ感の強い部位と少ない部位がございます。ジャケットの全てにシボが行き渡るように製作する事は不可能ですので、予めご了承くださいませ。※
こちらが上記【Euphrate/ユーフラテ】と【Tigr/チグリ】の画像サンプルです。
↓↓↓
いかがでしょうか?
"Nappa Lux"で全13色、"Euphrate/ユーフラテ"で7色、"Tigr/チグリ"で6色。
BADALASSIレザーだけで合計26種から選べるという事になります。
是非、現物のカラースワッチを御覧いただきまして、吟味していただけたらと思います。
そして、2シーズンを経過し、かなり定着してまいりましたこちらの素材。
TOKYO GOAT
-東京山羊鞣-
【VEGETABLE TANNED GOAT SKIN】Up charge +0yen
表情豊かな国内鞣しのゴートスキン(山羊革)をレギュラーマテリアルに。
国内においてベジタブルタンニン鞣しのゴートスキンは流通量が少なく入手が困難でありながら、全8カラー展開でラインナップ。
ゴートスキンならではの豊かな表情と、ベジタブルタンニン鞣し特有の経年変化は、存在感を増したMUSHMANS Leatherのマテリアルに必要不可欠な選択肢とも言えます。
昨年の受注会において、このマテリアルでトライいただいたお客様分、納品時に皆様一様に興奮されておりました。
革厚も縫製の限界まで厚い状態で作り出します。
こんな厚いレザー着こなせるのか?と始めはたじろぎますが、実はとてもソフティなマテリアルですので、着用感は良好なのも魅力です。
【Black】【Brown】はアニリン(染料)仕上げ、それ以外のカラーはピグメント(顔料)仕上げ。
ピグメントのカラーに関しても経年変化が出るのが特徴で、使い込む程に濃色へと変化し艶が増す。
今までに無かった選択肢、これからが楽しみなレザーマテリアル。
カラーラインアップは全8色
↓↓↓
【ANILINE CHROME GOAT SKIN】 Up charge +0yen
こちらは上記のゴートスキンと同様ながら、クロム鞣しによってより薄く、より軽量としているマテリアル。
ディアスキン並みに柔らかい仕上がりながら、革の表情はシャープですので、ディアスキンのオジサン臭さが無いという事で非常に好評いただいております。
重たいレザージャケットを既に色々と保有されている方が、たまに気兼ねなく羽織りたい。でもディアの野暮ったい感じは嫌だ。と感じているお客様にお勧めなマテリアルです。
先に御紹介したVegetable Tanned Goat Skinより、ワントーン落ち着いた発色も魅力です。
カラーラインアップは全6色
↓↓↓
さらに、今回初のリリース。
ちょっと面白い革。を作ってみました。↓
こちら1色のみの展開ですが、試験的なマテリアル。
MUSHMANS Original
Vintage Graze Steer
"NAVY"
【Vintage Graze Steer NAVY】 Up charge +0yen
常に高品質の素材を提供する事を念頭に素材調達を行っておりますが、このレザーだけは品質というところは度返しして作りました。
面白さ重視。
まるでデニムファブリックのような色落ちになるレザーです。
↑の画像、大きい画像でズームして見ていただけるよう、画像をクリックしていただくと拡大して御覧いただけます。
画像のバックグラウンドの革が新品時、袖部分の革が数回着用時の物で、かなり変化しておりますが同一のレザーです。
国内タンナーでベジタブル+クロームコンビ鞣しのステアハイドを、プルアップするように仕上げております。
このレザー表面を銀擦り(表面を削る)する事で、革の強度を落とし、着馴染みを促進する処方。
米H社のクロムエクセルと同様のアプローチですね。
クロムエクセルレザーを使った事のある方は感じられていると思いますが、この革表面を銀擦りする事で、革本体の強度は落ちるのですが、馴染みは驚く程早いものとなります。
革の強度が落ちると言えど、絶対的な強度の事であって、ジャケットとして使用する実用強度が担保できなくなる訳ではありません。
私達の水準で言えば、この銀擦りレザーは品質が良いとは言えないものでありますが、この処方でないと出せない経年変化の雰囲気がというのがあるもので、上の画像を御覧いただくと、この変化は面白いと感じていただける事と思います。
もう一度申し上げます。
この革は品質を重視して作ったのではなく、今までに無かった"ヴィンテージと見紛うような経年変化"を目指した素材です。
そして、本年の目玉レザー!
今期創業15周年となるMUSHMANS、この15年間の集大成と言っても過言では無いスペシャルなマテリアルを用意しました。
MUSHMANS
15th Anniversary
Special Leather
15年間、様々な革素材を使い、様々な物作りを行ってきた中で、我々MUSHMANSが理想とする物は何なのか?
その時その時で嗜好は変われど、必ず戻ってくる所がございます。
理想というものの真は変わる事が無い。
その理想をカタチにしたのが、今回の15周年スペシャルレザー。
・革ジャンはやっぱり黒がいい。
・顔料ではなく染料の透明感が好き。
・黒であっても変化がある革が良い。
・鞣しはやっぱりベジタブルタンニン。
上記の要件を全て満たす。
これが今回のテーマでした。
さらに、私達がこれまでお付き合いさせていただいた中で、信頼できるタンナーさんにお願いしたい。
しかも、牛・馬・山羊とそれぞれ異なる表情を楽しんでいただきたい。
物凄くワガママで、難しい。
15周年の集大成。
これを達成できるか否か、奔走した結果が出ました。
・牛革担当
BADALASSI Carlo s.r.l
・馬革担当
新喜皮革
・山羊革担当
TOKYO GOAT
それぞれ異なるタンナーさん、それぞれ異なる品種の原皮。
それらを同じアプローチで作り出す。
タンナーの所在地(国)も異なれば、品種も異なる。
故に、全てを同様の発色に仕上げるのは困難を極めましたが、様々な方の御協力のもと、完成に至りました。
勿論、全てMUSHMANSのオリジナルレザー。
特注による処方で作り出した渾身のマテリアルです。
カラーネームは全て『Vintage Black』
まずはBADALASSI Carloからいきましょう。↓↓
MUSHMANS×BADALASSI Carlo s.r.l
15th Special Leather
"HESAT/ヘザト"
(Cow hide)
Vintage Black
Up charge +15,000yen(16,500yen)
まさか、15年前に、このBADALASSI社に別注オーダーが出来るようになるとは、心にも思っていなかった。
遂にここまで来たんだ。
手前味噌ながら、私にとっては極めて感慨深い事であります。
様々な革素材と触れ合ってきた中で、様々な方向からどう見ても、やはりこのタンナーの作る革がレザージャケットには最適なんだと、その答えだけは変わる事はありませんでした。
着込む程に、自分の皮膚となっていくような、と語り出せば終わりが無い。所有されたオーナーだけに許される悦びは、この素材ならではのものであるでしょう。
このMUSHMANS特別色、↑画像で解る通り、下地はコニャック系のライトブラウン色にブラックで染める手法。
所謂『茶芯のブラック』と言われる処方でありますが、巷で見かけるそれはピグメント(顔料)で黒色着色しているもの。
私達の考えでは、ピグメントで黒色着色してしまうと、目に見えている物は革ではなく塗膜であると感じてしまう。
素材に良い物を使えば使う程、このピグメント(顔料)は勿体ないと感じてしまうのです。
BADALASSI社に懇願したのは、これをアニリン(染料)のみで仕上げて欲しいという事。
アニリン(染料)のみで、ブラウン色に着色した場合、どうしても下地の色が影響してしまい真黒の発色にできない。
それで良い。それが良い。
逆に真っ黒でないからこそ、この仕上げの意味があり、味わい深い物となるんじゃないだろうか?
そういった意図を、イタリアから来日したシモーネ現社長に伝えたところ「それは面白い」と快く引き受けてくれたのが、昨年の冒頭であった。
それから何度も、発色の確認サンプルをやり取りし、このHESAT(ヘザト)が生まれた。
この発色に至った時、本当に感動した。
↑この画像を御覧いただきたい。
ズームして御覧いただきたいので、クリック若しくはタップいただくと大きい画像でご覧いただける。
これ、布で磨き込んだ後の状態だ。
激しくスクラッチした中央部分、うっすらと下地の色が浮き出してきているのが見て取れるだろう。
これがアニリン(染料)のみで着色した恩恵。
パリパリと顔料が剥がれて下地が見えるのではなく、ジワジワとグラデーションのように下地が浮き出してくる。
アニリン(染料)のみで仕上げる事で、この湧いてくるような下地の出方となる。
しかも、やはり素晴らしいのが、このスクラッチした箇所が、より光沢を増すという事。
この記事の冒頭で、長々とBADALASSI社について記述したが、この光沢こそが真のバケッタ製法で作り出された革の真髄。
続いて、馬革でも同じ処方を。↓↓↓
MUSHMANS×新喜皮革
15th Special Leather
"GULLTOPPR/グルトップ"
(Horse hide)
Vintage Black
Up charge +10,000yen(11,000yen)
先に御紹介した、BADALASSIバージョンと同様の処方にて馬革を。
ならばタンナーは新喜皮革以外に無い。
ピット槽を保有し、ピットタンニンが出来る唯一の馬革タンナーである新喜皮革。
クイックドラムタンニンでは得られない、鋭利に刻まれる皴こそ、本当に知って欲しい馬革の魅力である。
『馬革=良い革』という図式は本来誤った見解であり、馬革の中でも良い素材と、そうと思えない素材がある訳で、誤った情報に踊らされる事なく、真実を知って欲しいというのが本音である。
この素材もBADALASSIバージョン同様、下地にライトブラウン色を使用し、アニリン(染料)のみで黒色着色を施している。
もともとの生体傷が多い馬革は、傷を隠せる為にピグメントを採用する事が多いが、MUSHMANSにお越しいただくお客様は、この生体傷に関してご理解が深いという事もあり、アニリン(染料)が採用できる。
ピグメント(顔料)着色のブラックとは異なり、やはり新品時から下地の色が影響し、薄ら茶色い黒。といった発色となっており。
透明感が美しい仕上がりだ。
馬革は牛革に比べ繊維質が軽量な為、着用感も軽量に仕上げる事ができる為、そういった観点からもご検討いただきたい。
そしてGOAT SKINを。↓↓↓
MUSHMANS×TOKYO GOAT
15th Special Leather
"AMALTHEA/アマルテア"
(Goat skin)
Vintage Black
Up charge +5,000yen(5,500yen)
昨年、COLIMBOとの別注Stockman's Coatの際に試験的に採用した素材と同様の物。
今回の企画の布石として使用していた物だ。
ゴートスキン特有の躍動するスジ感が魅力で、この荒々しい経年変化を目の当たりにし、このマテリアルに魅了されたお客様も多い。
国内鞣しでは珍しいゴートスキンのフルベジタブルタンニン鞣し。
加脂の際に多量のオイルを染み込ませている為に、冬場にはブルームが浮き出る程のマテリアル。
この素材も、上記BADALASSIバージョンや新喜皮革バージョンと同様、ライトブラウン下地にブラック染料という処方になっている為、パリパリと剥離するのではなく、浮き出るように下地が顔を出す経年変化をお楽しみいただける。
という事で、MUSHMANSの15周年の集大成とも言える限定レザー3種となっております。
オーダーされる皆様の求める方向性に合わせて、お好みの品種をお選びください。
15周年記念レザーという事で作り込んだ素材、特注で革を作るという事は、それなりに大きなリスク(量)を要求されるものでもございます。
多くのお客様より、このスペシャルレザーは今期限りのものですか?とお問合せいただきますが、もし今期のオーダーがこの3種全てに集中したとして、ファクトリーの今期生産限界数と照らし合わせてみても、物理的に全て使い切れる量では無いと予想されます。
これはあくまで予想であって、確実性はありません。
ですので、会期中に関しては安心して焦らずじっくりとご検討いただき、実物を御覧になってお決めいただくのが良いかと思います。
今期のカスタムオーダーマテリアルは、全44種から選べるという事になりました。
これだけの選択肢、レザージャケットのオーダーでは類を見ないものであると思います。
間違いの無い品質の素材を、皆様の好みで無限に組み合わせられるという機会は、世界的に見ても希少な機会でしょう。
これを続けられるというのは、ご支持いただく(オーダーいただく)皆様があってはじめて達成できる事。
そして、協力してくれるファクトリーとタンナーがあっての事でございます。
正直に申しますと、ここまでやるのはイチ店舗ではリスクフル。
でも、やってる側が楽しいうちは出来るかな?って感じです。
辛く感じるまでは、全力で行こうと思っております。
おもしろき
こともなき世 に おもしろく
すみなすものは
心なりけり。